逆転

 

 

 

葉月は、いろいろ悩むわりにはその場のノリで一瞬で決めてしまう方だ。
一度決めたら突っ走る。(笑)
ノリと言うか、勘と言うか、自分なりの納得というのだろうか。

葉月のために愛人まで作ると言ってくれて、
葉月のあいまいな態度にあんなに真剣に怒って責めてくれたナオトさんの気持ちを信じてみようと思った。
こういうことって理屈じゃなくて本当に一瞬なんだなって思う。
もちろん、その一瞬のためにはたくさんの時間と、いろいろなことがあっての結果なんだけどね。
五月さんのこと、蔵人さんのこと、
パートナー選びについてはいろいろ辛いこともあったけど、
すべてがこの瞬間に結びついているような気がした。

 

その江戸っ子調の葉月の決断に対して、ナオトさんは急におどおどし始めた。

「どうしたの?ナオトさんはずっと、『僕を選んでね』って言ってたじゃない。
『僕だけを選んでね』って。その通りになったんだよ」
「確かにそう言ってたし、そうなるといいと思ってたよ」
「だったらよかったじゃん♪」

「でも、俺は葉月ちゃんの話もいろいろ聞いて、葉月ちゃんの気持ちもわかってる。
じん太さんのことは募集の条件に入ってたことだし、
葉月ちゃんが残りの女人生を有意義に過ごしたいって気持ちや、
いろんな気持ちいいことをしてみたいとか、
まだまだ知らない気持ちいいことがあるはずだって思う気持ちや、
自分の可能性を広げたいっていう気持ちはわかってるつもりだし、
その望みを叶えてあげたいと思ってる。
でもそれは、俺一人じゃできないことだと思うんだよね」

「だから、葉月ちゃんのためにはこれからもいろんな男といろんなセックスを楽しむのがいいんだと思うし、
そのためには俺はその他大勢の一人でいいって思った。
でもそれだけだときっとまた葉月ちゃんを独占したくなると思うから、
だから愛人を作ろうって決めて、それが一番いい方法だって思って今日に臨んだわけよ」

「葉月ちゃんの生き方の問題を、俺一人の独占欲で変えさせちゃっていいのかって思うと、責任が重すぎる」

ナオトさんはこんなような話をしてた。
葉月としては「え?」「え?」「えええっ?」っていうような気持ち。
やっとナオトさんの望んでいるお返事ができたと思った途端に
ナオトさんの方が葉月が今まで言っていたことを自分の意見として言い出したんだから。

お互いに相手の言い分を自分の主張として言い合うというような、
変な現象になってきた。

それから、ナオトさんはこんなことも言い出した。
「さっき葉月ちゃんのことを責めながら思ったんだけど」
「うん」
「あれは初めはプレイのつもりでやってたんだけど、やってるうちに本気入ってきちゃったんだよね」
「ナオトさん、本気だったよ、かなり」
「そうでしょ?俺ね、葉月ちゃんが他の男にされてることを想像して
それで無性に腹が立ってきちゃったんだけど、でもそういうことを考えると興奮するんだよね」
「葉月をああやって責めて興奮したってこと?」

「うんそう。俺ね、じん太さんがやってるような、奥さんを人に貸し出すとか、
自分にはそういうことは絶対にできないと思ってたんだよね。
ああいうことを平気でできる心理っていうか、気持ちがわからないって。
俺、ヤキモチ妬きだから、嫉妬で焦げちゃう 」

「じん太さんは奥様を他の人に貸し出したりして、すっごく嫉妬を感じてるらしいよ」
「え、やっぱり?」
「大事な奥さんを人に貸し出すことで嫉妬を感じて、
その嫉妬でまた奥さんへの愛情をそれまで以上に感じるようになるって、そんなことを言ってたよ」
「そうか〜、なんだか俺ね、その気持ち今はわかるような気がするんだよね。
葉月ちゃんが他の男にされてる光景を想像すると興奮する。」
「さっきのもそうだったもんね」

「そうそう。だからね、葉月ちゃんが他の男にされてきて、さっきみたいに
『どうだったんだよ?感じたんだろ?』とか言っちゃって責めるのも案外いいのかも、と思ってる」
「あはははは、嫉妬の興奮に目覚めたってこと?」
「そうなのかも。
俺ね、認めたくないけど葉月ちゃんが他の男にされてるところを想像するとマジ興奮する。」
「それじゃさ、葉月が他の人と『した方がいい』ってこと?」
「う〜〜〜〜ん、認めたくない。認めたくないけど、興奮する」

 

なんだか、変な状況になってきたぞ。
ナオトさんは認めたくない自分の感情をうまく整理できてないみたいだったけど、
その時の正直な気持ちをストレートに葉月に話してくれた。

「それじゃ、他の人とエッチしてもいいってこと?」
「『いい』ってハッキリ言いたくないけど、いい...のかも」

「それじゃさ、ナオトさんをパートナーに選んで、それは公表するとして、
その後も他の人とたまには遊んでもいいってこと?」
「う〜〜ん、パートナーに選んでもらうのは光栄だけど、それは公開しない方がいいんじゃない?」
「どして?」
「だって、ナオトが正式なパートナーですって言ったら、
じん太さんはともかく他の候補者さん達はみんな、もう遊んでくれなくなるでしょ?
プライドとかあるし。
男ってそういうもんだと思うなぁ」

他の候補者さんと言われて、葉月は五月さんと蔵人さんのことを考えた。
二人ともナオトさんをパートナーに選ぶということには応援してくれていたので
今さらがっかりするとかプライドとかっていうことはないとは思ったけど、
こういう状況になって、葉月が「他の人と遊んでもいい」ってことになって、
本当に遊んでくれるんだろうか?って考えたら、
蔵人さんは「その時を楽しみましょう♪」って人なので機会があれば遊んでくれそうな気がするけど、
五月さんは「たまに遊ぶ」なんてそんな軽いのはダメだろうなって思った。

「だから、葉月ちゃんはみんなの共有奴隷ってことで、俺はいいよ」
ナオトさんはそう言ってくれたけど、共有奴隷って言ったって
蔵人さんも五月さんも超忙しい人だし、今までだってその気があれば遊んでくれたってよかったのに、
全然声がかからなかったってことは
共有奴隷になったって遊んでくれるのは今まで通りナオトさんだけなんじゃないの?
って葉月は心の中で自嘲してしまった。

でも、ナオトさんのこのお申し出は、葉月の気持ちをとっても楽にしてくれた。
じん太さんに呼んでもらった時に会いに行ける環境だけは残しておけるし、
逆にそう言ってもらえると案外そんなに遊びまくりたいわけじゃないっていう自分の気持ちも見えてきた。
「絶対ダメ!」って制限されると「でも〜〜」って思うけど、
「自由にしていいよ」って言われると人間ってのは案外、
おとなしくしてるものなのかも知れないなって思った。

 

 

「でも葉月ちゃんが俺だけでもいいって言ってくれて嬉しかったよ」
「葉月もナオトさんが葉月の気持ちを考えてくれてとっても嬉しいよ」
「先のことはわからないし、またヤキモチに狂うかも知れないけど、
でも今はなんとかやっていけるかなって気持ちなんだよね。他に愛人も作るし」
「あ、やっぱり愛人は作るのね(^_^;)」

 

本当に、ヤキモチ妬きで独占欲の強いナオトさんが、
どうして急にこんなに物分かりがよくなっちゃったんだろうって、
不思議で仕方がなかった。
でも、このナオトさんの変化は「葉月のためを考えて」のことだっていうのはよくわかっていた。
「他に愛人を作る」なんてことはそもそもナオトさんの求めてる形じゃなかったはずで、
無理に葉月を変えさせるのではなく、
葉月を尊重して自分を変えてくれた。
言葉ではうまく言い表せない、熱いものを感じた。

 

考えてみれば五月さんも蔵人さんも、みんなみんな葉月のことを考えてくれてる。
自分の欲とは別のところで「葉月にとって一番いいこと」を考えてくれる。
どうしてみんな、こんなに葉月のことを考えてくれるんだろうって、
それが不思議で仕方がない。
葉月の方はみなさんに何もしてないのに。

 

どういう形でパートナー決定を公表するのか、もしくはしないのか、
いろいろ課題は残っていたけれど、
取りあえずこの時点で葉月はナオトさんと正式にお付き合いさせてもらうことになり、
しかも他の男性とも遊ばせてもらうことを認めてもらった。

「いいのかなぁ、こんなんで」って、思っていた。
どうしてこういう風になっちゃったのか、本当に不思議だった。
でも、こんなナオトさんとだったら末長くお付き合いできるかなって、
この時の葉月はとっても幸せな気分だった。

 

条件を提示してナオトさんと付き合う、なんてことを考えていた葉月だったけど、
そんなことを言い出すよりもずっと素敵な結果だな、と思った。

ナオトさんは、お試しプレイを一巡した段階で葉月がナオトさんを選んでいたら、
こういう気持ちにはなれなかったと思うって言っていた。
「結果的に、今まで引っ張ってもらって、
葉月ちゃんの話をいろいろ聞いてきたから今みたいな気持ちになれたからよかった」
って。

引っ張ったつもりはないけれど、長い時間がかかったなぁとは葉月も思っていた。
リュウさんとのお別れから7ヶ月。
やっと落ち着ける場所をみつけられたのかな、って思った。

 

葉月はこの時、裏葉月の中でどういう風にナオトさんを紹介しようかな〜?なんて、
早くもそんなことを考えていたのだった。

 

 

 

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