アドバイス

 

 

 

ナオトさんとの電話で、
パートナー選びのことをハッキリさせろと詰問されたのは木曜日のことだった。
毎日メールや電話をして、何度もデートして、
事実上はまるで恋人同士のような関係でいながら
いつまで経っても正式なパートナーを決めない葉月に
ナオトさんがとうとう痺れを切らせたのだった。

 

その時のナオトさんの言い分は、
「いつまでもこんな、その他大勢の中の一人をやっているのは耐えられない。
さっさと自分に決めるか、もしまだ他の候補者とのお試しを続けるなら、
他のお試しが終わるまで葉月ちゃんとはエッチしない」
というようなものだった。

もっとわかりやすい言葉では、
「葉月ちゃんのおまんこに、これからも他のヤツのおちんちんが入るのかと思いながらエッチするのは嫌だ!」
という言い方もされた。
(相変わらずとてもわかりやすいことを言う人だ。)

 

ナオトさんの気持ちは理解できたし、もっともだと思った。
ナオトさんの気持ちはいつも真っすぐ。
その真っすぐな気持ちに対して、葉月はきちんと答えを出さなければいけないと思った。
だから、日曜日にデートをすることにした。

電話では埒が明かないし、ちゃんと顔を見ながら話をしたいと思ったからではあったけど
本当は考える時間が欲しかったのかも知れない。
気持ちが決まっていれば電話だって即答できたんだから。

 

ナオトさんにはいつも気持ちよくしてもらっていたし、一緒にいると楽しいし、
葉月はナオトさんをパートナーに選ぼうと思ってた。

でも、それを躊躇させていたのは、
ナオトさんが葉月に「オンリーワン」を望んでいることだった。
ナオトさんはヤキモチやき。
葉月が他の男性の話をしただけで「焦げる」といつも言ってた。

「募集条件を守らないことは申し訳ないけど」
と言いつつ、
「先に条件で出されていたじん太さんのことだって、本当は認めたくない」
とも言っていた。

 

複数の人と種類の違うセックスやSMを楽しむことを知ってしまった葉月は、
相手を1人だけに決めてずっと長くお付き合いしていく自信がなかった。
複数の人を愛しているからといって
ひとりひとりへの気持ちが薄いのかと言ったらそうじゃない。
そのことをナオトさんにわかって欲しくて
葉月はそれまでにも何度も何度もナオトさんにその話をしてきたけれど
ナオトさんにはわかってもらえなかった。
いや、わかってくれてることにはなっていたけれど、
それはナオトさんの求めているものとは違うってことは葉月にもよくわかっていた。

でも、だからと言ってナオトさんとお別れする、ということも葉月にはできなくなっていた。
ナオトさんのことを本当に好きになってしまっていたから。

 

 

木曜の昼間にその電話をしてから、木曜午後、金曜、土曜と、
葉月は五月さんと蔵人さんに相談をしていた。
二人の保護者・五月さんと蔵人さんは、自分の欲よりも先に葉月のことを考えてくれる。
同じ候補者である二人にナオトさんのことを相談するっていうのも変なものだけど
葉月のこの迷いを理解してくれるのは五月さんと蔵人さんだけだった。

ナオトさんのことで二人は、本当にたくさんの時間をかけて葉月を心配してくれた。
葉月とナオトさんがなんとか「いい関係」になれるように
真剣に考えてくれた。
率直な意見ももらったけれど、「アドバイス」をもらいたかったというよりは
葉月は二人に聞いてもらうことで自分の気持ちを整理したかったんじゃないかと思っている。

 

 

蔵人さんは
「葉月さんの本当にやりたいことをもう一度誠意をもってナオトさんに話して
他の人を愛することがナオトさんを軽く考えているのではないということを
わかってもらうように努力した方がいい」
と言ってくれた。

蔵人さんはずいぶん早い段階から葉月の求めているものを見抜いていて
パートナーを無理に1人に決めないでいろいろなことにチャレンジした方がいい、
というようなアドバイスを葉月にくれていた。

今の葉月のいろんな意味での「もっと、もっと!」という欲を
1人の男性(ナオトさんがということではなく)が満たすのは難しい、というような見解は
確かにその通りなのかも知れなかった。

 

普通だったら旦那さんとしかエッチをしないで一生を終わってしまうような主婦だったのかもしれないけど、
十人十色だということを身をもって体験してしまった葉月さんとしては、
いくらナオトさんのことが好きだといっても、
ナオトさんだけに絞る踏ん切りが付かないという気持ちがあることを
ナオトさんにわかってもらえるようにもう一度誠意を持って話してみたらどうでしょうか。

正直さと素直さが、相手に理解を促すには最大の武器です。
変に美辞麗句を使ったり、駆け引きを仕掛けたりするよりずっと効果的です。
当たって砕けるつもりで、ナオトさんにぶつかってみて下さい。
葉月さんを本当に愛しているナオトさんなら受け止めてくれるんじゃないかと思いますよ。

 

蔵人さんに言われたことはそれまでも何度もナオトさんに話したことではあったけど
言われてみれば電話や車の中での会話などで葉月が軽く話したりしてただけで
ちゃんと面と向かってナオトさんに「話」をしたことはなかった。

確かに、ちゃんと話せばナオトさんならわかってくれるかも知れない。
さすが蔵人さん、いいこと言う。

 

 

五月さんの考えは違っていた。
五月さんは
「真っすぐな性格のナオトさんと本気で付き合うなら、彼ひとりにした方がいい」
という意見だった。

 

付き合いはじめの時期って、お互いの気持ちが盛り上がる一番いい時、
いわば「新婚時代」みたいなものです。
その一番いい「甘い時間」をまずは二人っきりで楽しまないともったいないですよ。

 

五月さんは電話で、ずいぶん長い時間をかけてこんな話をしてくれた。

 

まず恋愛ありき。まず二人の絆ありき。それが出来てから、関係性の変化もアリ、だと思います。
具体的なイメージとしては、仲のいい夫婦がお互い合意でSwappingを始めるとしても、
それはまず二人の時間があり、より深い信頼関係が出来てその上で…の事ではないかと。
「やっぱりこういう事もしてみたいな」というのは。

 

うん、確かにそうかも知れないと思った。
この当時、葉月はナオトさんに不満を感じていたわけではなかったし、
ナオトさんと並行してすぐに誰かとエッチしたいと思っていたってことじゃなかった。
先のことはその時になって考えるとして、
今はナオトさんだけとラブラブしてればいいのかなっていう気持ちになった。

 

その「恋」を味わうためにはどうすればいいか、
今が味わい時ですよ〜、チャンスを逃しちゃダメですよ〜というのが五月の能書きのベースです。

さすが、うまいこと言う。

 

 

どちらの意見も正しいと思った。
というか、正解なんてないんだよな、って思った。

でも葉月は愛人さんとのデートだけは認めてもらいたいと、それだけは思っていたので
考えに考えて、
「じん太さんとも会っていいならナオトさんをパートナーに選ぶって条件付きでパートナー宣言をしようかな」
って言ったら
五月さんと蔵人さんは口を揃えて「それだけはやめた方がいい」って言った。(笑)
確かにそういう言い方はナオトさんに対して失礼だ。

二人の強力な保護者にたくさんの励ましをもらって
でも葉月自身は結論を出せないまま、デートの日を迎えることになった。


 

日曜日、
待ち合わせの場所から、結局ラブホに直行することになった。
ゆっくり話をするにはラブホの方が都合がいいし、
こんな話になる前に今度会った時のためにと思ってお道具とか下着とか買ってあったものがあって、
葉月はエッチしてもらいたいと思っていたし、それはナオトさんも同じだったので、
どちらから誘うということではなく、なんとなく自然にラブホに行くことになった。

でも、この日のナオトさんはなんとなくよそよそしい。
いつものラブラブモードじゃない。
葉月はすぐにそのことに気がついたけど、わざと気付かないフリをしていた。

ホテルに入って少し世間話なんかをして、葉月が買っておいたお道具を見せたりして、
そろそろエッチモードって時になってナオトさんが低いトーンでボソッと言った。

 

「今日は虐めるからね」

 

 

 

 


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