そして1つ目の失恋

 

 

爺からのそのメールは葉月を苦しめた。

「全員の方にお試しプレイをして頂いて、パートナーを決めます。
みなさんに失礼なことをしているのは重々承知したうえでこんなお願いをしています」

パートナー候補のみなさんには、こんな葉月の気持ちを話して了承してもらっていた。

 

爺とのお試しプレイが終わった時にはすでに他のみなさんとは顔合わせ面接が終わっていて
みなさんとはお試しプレイの約束をしていた。
葉月と会ってお試しプレイを拒否する人はいなかったし、
みなさん好意的にこのルールを納得してくれていた。

みなさんを天秤にかけるようなこんなルールが
本当に失礼なことだってことはよくわかっていたけれど、
リュウさんとお別れして、パートナーは欲しいけど、
自分にどんな人が必要なのか、自分にどんな可能性があるのか、
葉月にはよくわからなくなっていて、
当時の葉月は「葉月をいろいろ試してもらいたい」っていう気持ちが強かった。

だからこんな話をお願いしたんだった。

試してもらいたい気持ちもあったし、それよりさらに、
そんな葉月の気持ちを理解してくれたみなさんを裏切るようなことはできないと思った。

 

「今すぐに返事を。それがルール違反で失格というのならそれでもいい」
という爺からのメールに、葉月のお返事の選択肢はなかった。

「ごめんなさい。他の方とのお試しプレイをやめることはできません」

爺にはそうお返事を書いた。

 

他に書く言葉がみつからなくて事務的に返信してしまったけれど、
心の中では葉月は爺に手を合わせていた。

「ごめんなさい。今はまだ爺に決められない」

爺の気持ちはよくわかっていた。
そこまでしてくれる葉月への気持ちを本当にありがたいと思っていた。

後になってナオトさんが、「爺の気持ちはよくわかる」って言っていた。
「僕だってそうしたいくらいだった」とも。

実際にナオトさんは、お試しプレイが一巡した後もパートナーを決めないで
それでいてナオトさんとデートを続ける葉月に
「いつまでこんなことを続けるつもりなんだ」って言って
ケンカになりかけたこともある。

それが普通の感覚なんだと思う。
葉月のことを思ってくれていればなおさら。

 

でも、この時すでに爺より前に五月さんとのお試しプレイが終わっていて
葉月は五月さんにローソクで気持ちよくされちゃった感覚、
あの不思議な感覚を忘れられないでいた。

五月さんと爺を比べるっていうことじゃなくて、
「まだ、もっと、気持ちいいことが他にあるかも知れない」って
それを知りたい欲望を捨てられないでいた。

ここまで来たら途中では止まれない。
そんな気持ちが強かったんだろう。

 

「大切なのは愛なんじゃないのか?」

爺からのメールにはこうも書かれていた。
これは葉月の胸にかなり刺さった。

みなさんを利用して、葉月は罪なことをしてるんだな。
真剣に愛してくれてる人の気持ちを受け入れないどころか
逆に傷つけている。
爺のことは大好きなのに。

 

 

 

爺、辞退。

形は葉月がお断りしたことになるけど、事実上は葉月がフラれたってことだ。
このことについて葉月には何も言う権限はない。
言えることは「ごめんなさい」だけだ。

やる気満々だった葉月のお試しプレイの勢いは爺との失恋で急に失速し、
なんだか自分がやってることに自信が持てなくなってきて
次の蔵人さんとのお試しプレイまで1ヶ月も間が空いてしまうことになった。

 

そんな状態の葉月を、常に静かに支えてくれていたのは
爺と同じ候補者である五月さんと蔵人さんだった。

 

 

 

 

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