嫉妬

 

 

 

ことの始まりは、啓太さんからの1通の携帯メールだった。

普通に仕事していた葉月はデスクワークしている時にそのメールを受信した。

 

「明日ミキちゃんと飲んできます。
と言いつつ、なんで飲むだけで連絡入れてるのかよくわからんけど(笑)」

 

ミキちゃんっていうのは最近啓太さんとメールのやりとりを始めた女の子で、
元々は葉月の知り合いだった子だ。
ミキちゃんは地元の友達なので葉月が「裏葉月の葉月」であることは知らないし、
啓太さんと「プレイボーイな関係」であることももちろん知らない。

啓太さんとミキちゃんがメールのやりとりをするようになったことは聞いていた。
だけど、いつの間にか飲みに行く関係になってたのか!

 

ちょっと意外だった。

いや、葉月が考えていなかっただけで、啓太さんは誰とでも気軽に話せるタイプなので
考えてみればそんなに意外なことでもないのかもしれない。
(なにしろ「プレイボーイ」なわけだし。笑)

葉月がきっかけで知り合った子だから、
啓太さんは仁義を通して飲みに行くことを事前に報告してきたんだと思う。
その点は、コソコソするのを嫌う葉月の性格をよくわかってる啓太さんとしたら当然の行為。

 

だけど…、
このメールを読んで、葉月は胸がチクッとするのを自分で感じてた。

 

あれ?
このチクッはなんだろう???

啓太さんと葉月は、エッチはする関係だけど、一対一のステディな関係ではない。
そもそも葉月は蔵人さんという人がいながら啓太さんに遊んでもらってるわけで、
啓太さんに「他の人とは付き合わないで!」なんて言える立場じゃない。
それどころか、啓太さんに本当に好きな人ができたら、
葉月は何も言わずに身を退く覚悟だった。
その覚悟は今でも持ってる。

啓太さんはカッコいいし、モテるタイプだから、
今までだって葉月以外の人と遊んだりエッチしたりはしてたはずだ。
啓太さんはそれをわざわざ葉月には言わないけれど、
そんなのあってあたり前のことだと思っていたので、葉月は気にもしなかった。

 

気にしないはずなのに…、どうしてこのメールにはこんなにチクッとするんだろう?
このチクッは、どう考えても嫉妬のチクッだ。

 

たぶん、相手の女性が葉月の知ってる人だからだ。
葉月が全然知らない人だったら、こんな気持ちにはならないはずだ。

しかも、ミキちゃんは可愛くて、葉月にない色っぽさを持っていて、
たぶん啓太さんの好きなタイプだ。
それはなんとなくわかる。

ミキちゃんにとっても、啓太さんは新鮮なタイプなはずだ。
啓太さんのようにカッコつけない自然体で接してくる男性に、ハマる女はハマる。
葉月がそうであったように。

 

「なるほどね」って葉月は思った。
この二人は惹かれ合う。

そんな予感がした。
女の勘だ。

 

さて、ここで葉月はどういう態度でいればいいんだろう?って思った。

まだ「明日飲みに行く」っていう段階だ。
まだ何も起きてはいない。

「飲みに行くだけ」の啓太さんを止められる立場でもないし、止める理由もない。

だけど、「いってらっしゃい。楽しんで来てね」と、素直に返信できない自分もいた。
本当ならそういうオトナな対応をするところだけど、
葉月は啓太さんに嘘はつけない。

 

「うっ!今ちょっと嫉妬を感じたなぁ。
そうか、蔵人さんもいつもこんなようなチクッとした気分を味わってるのかなぁ?」

こんな返信をするのが精一杯だった。


蔵人さんの声

葉月は自分がチクッとしたことで、自分に軽いショックを受けていた。

だって、今まで自分が「二股かけてる」ようなことを堂々とさせてもらっていたのに、
その相手が他の人と遊んでくるっていうだけでこんなにチクチクしているんじゃ、
筋が通らない。

ここ数ヶ月、蔵人さんが忙しくて啓太さんに遊んでもらうことが多かったし、
葉月の気持ちはググッと啓太さんに方に入り込んでいたんだなぁっていうことに気付いた。


蔵人さんの声

うわヤバイ。

アタシ、自分が思ってるよりもずっと啓太さんに惚れちゃってるんだ。
そして、啓太さんはいつかは必ず葉月のところから離れていく人だってことを忘れてた!

ミキちゃんとのことが何でもなくても、これからもこういうことはいくらでもあるだろう。
その度にこんな風にチクチクすることになるのか!

 

啓太さんが他の人を好きになる。
啓太さんが葉月から離れる。
啓太さんともう遊べなくなる。

 

まだそうと決まったわけじゃないのに、悪い方悪い方に考えてしまって、
目に見えない不安が心の中をぐるぐる回る。

珍しく、葉月はどーーーんと落ちた。
自分の行動ではどうすることもできないだけに、落ちたところから這い上がれない。

 

蔵人さんはいつも、どういう風に考えているんだろうって思った。
蔵人さんは葉月が啓太さんと遊んでくるって言っても全然嫌な顔しないし、
葉月が楽しそうにしているとむしろ嬉しそうだ。

それはたぶん、葉月が啓太さんとどんなに楽しい時間を過ごしても、
必ず自分のところに戻ってくるっていう自信があるからなんだろうなって思う。


蔵人さんの声

だけど、葉月にはそんな自信はない。

啓太さんは10歳も年下で、年相応な恋愛だってしたいだろうし、
いい男だからその気になれば女には不自由しないはず。
そんな啓太さんの心と体を繋ぎ止めておく魅力が葉月にあるとは思えない。
今だって、どうして啓太さんが葉月と遊んでくれてるのか全然わからないもん。

だから、
「いつまでもこんな幸せな関係は続かない」って、いつも心に言い聞かせてたはずなのに、
こんなにチクチクしちゃってる自分。

 

アタシって、カッコ悪いじゃないのよ!

そんな自己嫌悪も感じる。

 

自分が許せないのと、気分がモヤモヤするのとでどうしようもなくなって、
蔵人さんに滅多に出さないヘルプメールを出したのが、木曜日の夜。

 

 

 

 

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