預託3

 

 

 

 

東吾さんにお目にかかる当日。
この日は朝から会議があって、午前中はとても忙しくしていた。

適当な口実で会社を抜け出したのが15時過ぎ。
東吾さんとの待ち合わせは16時だ。

 

待ち合わせの喫茶店には葉月の方が先に着いた。
コーヒーを注文してそわそわ待ってると、しばらくして東吾さんが登場した。

「こんにちは。ご無沙汰してます」

「あっ東吾さん、ここここんにちは!」

昨年の裏葉月飲み会の時以来だから、東吾さんとは4ヶ月ぶりくらいだ。

何度もお目にかかった方ではあるけれど、
こうやって面と向かって、しかも2人きりで会うなんて初めて。
緊張もしたけど、「うー、東吾さん、カッコイイ♪」なんてミーハーなことも考えていた。

 

東吾さんがカフェオレを注文して、それからいろいろおしゃべり。
仕事のこととか家族のこととか、いろんなことをお話したけど、エロ話は皆無。

そしてしばらく経った時、

「昨日の電話で葉月さんが言っていたこと…」

って東吾さんが言った。

 

へ?
葉月、電話で何か言ったっけ?

あ、そうか。
葉月がいろいろ余計なことを考えちゃうってことね。

 

「すべて了解してますから」

っていうようなことを東吾さんがニッコリ笑いながら言ってくれた。
その笑顔と、余裕の言い方に、葉月は「うわー!」って思った。

うわー!っていうのは、うまく言えないんだけど、

あ、この人は葉月が伝えたかったことをわかってくれたんだ!

っていうような安心感と、
わかってくれて、「そんなことは気にしなくていいからすべて任せておきなさい」
って言ってくれてるような包容力。

少ない言葉でそれを葉月に伝えるオーラみたいなものが凄いなって思ったし、
昨日正直にお話してよかったって思った。


東吾さんの声

大人の包容力っていうのかなぁ。
東吾さんは会話をリードするのがうまい。

聞き役に徹するでもなく、自分だけが話し続けるんでもなく、
ちょうどいい配分でおしゃべりを楽しませてくれる。

東吾さんのいろいろなお話は、葉月にはとてもとてもおもしろくてためになって、
話にどんどん引き込まれる。
そうかと思うと

「葉月さんはどうなんですか?」

っていうように、自然に話を振ってくれるので自分の考えも言える。

そして葉月の言ったことに対して、
東吾さんは自分の経験談を交えてわかりやすく意見を述べてくれる、
というような感じ。

仕切られているのではなく、自然にそんな時間が流れて、
あっという間に1時間くらいが経ってしまった。

 

喫茶店を出た時には葉月はすっかり東吾さんに懐いてしまっていた。


東吾さんの声

ホテルに行くつもりだったんだけど、
時間が18時だったので、ちょっと食事してから行こうということになって、
東吾さんにお洒落な居酒屋さんに連れていってもらった。

間接照明が素敵で幻想的な雰囲気の居酒屋さん。
落ち着いた掘りごたつ席の個室に入れてもらった。

 

「葉月さんは?何飲む?」

「えーっと、ビール飲むとお腹ぽっこりになっちゃうんだけど、うーん…、
でもこのキリン一番搾りの誘惑には勝てませんってことで生!」

 

あー、アタシってほんとダメ。
これから初めての人とエッチするってのに、ビール飲んじゃいかんでしょ。(反省)

東吾さんが店員さんを呼んでドリンクを注文。

「えーっとね、生ビールを1つと…、ウイスキー、これ炭酸で割れる?」

「はい、できます」

「それじゃそれ」

って、うわーーー、ハイボールですかあ?

しっぶーーーーい♪ 


東吾さんの声

葉月的ナイスおじさま像の上をいく東吾さん!
テレビタレントやスポーツ選手などにはほとんど心を動かさない葉月が、
ミーハーのように東吾さんに(心の中で)キャッキャする。

 

食べ物のメニューを見ながら「何を食べようか」ってことになった。
メニューにはおいしそうなお料理がたくさん並んでいた。
葉月はメニューを覗き込みながら「あれと、これだな」って食べたいものを決めていた。

東吾さんは店員さんに、

「僕はね、このイワシの丸干しと…」

え?
それ、葉月も食べたいと思ってました!

「それと、この比内地鶏の串焼き」

うわ!葉月もそれ!

えええーっ?
この人って、なんで葉月の食べたいものわかっちゃうの〜?

 

不思議な感覚だった。
心を見透かされてるみたいな変な感じ。

その後、「紀州梅のお茶漬け」を頼む時にも好みが同じで大笑いになった。
葉月は死ぬ前に最後に何か食べるとしたら紀州梅干と心に決めている。

ちょっと前に蔵人さんの出張先にお泊まりに行った時、
朝食のバイキングで蔵人さんは洋食とパン、葉月は納豆とか海苔とご飯とお味噌汁で、
好みが正反対なので大笑いになったんだっけ。
いえ、だからいいとか悪いとかじゃないんだけど。

でも食べ物の好みが同じって、なんとなく仲間意識が湧いてくる(笑)。


蔵人さんの声

居酒屋さんでも、エロ話はほとんどなかったけれど、葉月は

「どうして葉月を誘ってくださったんですか?」

っていうようなことを東吾さんに聞いたような気がする。
だってだって、どうしてなんだかさっぱりわからないんだもん。

サイトを見てるだけで勝手に「いい女なのに違いない!」って虚像を創り上げちゃってる人ならともかく、
何度もお目にかかってるし葉月がこんなだってことはよくご存知の東吾さんが、
どうして葉月に声をかけてくださったんだろう?

わからない。
わけがわからない。


東吾さんの声

「どうしてって…、それじゃ葉月さんはどうしてここにいるの?
僕が嫌いじゃないからここに来てるわけでしょ?
そういうのの理由なんて説明できないでしょうが(笑)」

「なーに言ってんですか!
東吾さんは誰が見てもナイスジェントルマンで素敵な方じゃーないですか。
葉月は東吾さんの素敵なところなんていくらでも説明できますよ?」

「そうなの?(笑)」


東吾さんの声

 

なっちゃんのような若くてカワイイパートナーがいて、
女に不自由してるわけじゃない東吾さんが、どうして葉月なんかに?

いろんな女性に興味があるっていう男性心理はわからなくもないけど、
その対象がどうして葉月なんだろう?

世界最大の謎だ。


東吾さんの声

逆に東吾さんから質問されたことは、

「葉月さんはどういうのが好きなの?」

っていうことだった。
「どういうの」っていうのはつまり、エッチの嗜好のことだ。

東吾さんの聞きたいことはよくわかる。
エッチにもいろんなパターンがあるし、
SMということになればさらに、羞恥系とか陵辱系とか苦痛系とか、いろいろな種類がある。
相手の好みがわからないと外してしまうから、
事前にそのことだけは聞いておきたいっていうことなんだろう。

 

でも、葉月って一体、何系なんだろ?

苦痛系じゃないことはハッキリしてる。
言ってみれば快楽優先系。
気持ちいいことが好きだ。

でも東吾さんが聞きたがっているのはそういうことじゃないと思った。
葉月がへなちょこなことはわかっているんだから、
いきなりビシバシ鞭で叩こうとは思っていないはずだ。
たぶん、葉月の好きな関係性みたいなものを言わなければいけないんだろうなぁって思った。

 

うーーーーん、困った!
葉月の嗜好ってどんなのなんだろ?
(蔵人さぁ〜〜ん、葉月は何てお答えすればいいんでしょうかぁ〜〜?)


蔵人さんの声

悩んだ揚げ句にこんなことを言ってしまった。

「えーっとですね、このメス豚ぁ!!!的なのはNG」

「うん。」

「でも、この淫乱女ぁ!!!はOK」

「ははは、なるほどね。わかりました」

 

あ、伝わった!って思った。

凄いな、東吾さん。
これだけでわかってくれるなんて凄い。

 

葉月が東吾さんに楽しんでもらいたいと思っているように、
東吾さんも葉月を楽しませたいって思ってくれているはずだ。

これからお付き合いが始まる関係ではなくて、たった1回だけの単発デート、
つまり一発勝負だ。

葉月には蔵人さんという存在があって、葉月は蔵人さんに不満があるわけじゃない。
その葉月をわざわざ誘ってくださったということは、自信があるからに違いない。

穏やかに微笑むその表情の裏で、東吾さんは何を考えているんだろう?
これから葉月をどうしようと思ってるんだろう?

 

でもきっと、東吾さんは葉月を気持ちよくしてくれる。
なんとなくだけど、この時そう思えた。

もうつまらないことは考えるのをやめよう。
全部東吾さんにお任せしよう。


蔵人さんの声


東吾さんの声

居酒屋さんでの2杯のビールと1時間半くらいの楽しいおしゃべりで、
葉月の心はすっかり東吾さんにオマカセモードになったのだった。

 

外は冷たい雨が降っていた。

その雨の中、葉月は東吾さんの後について歩いて、
1つのホテルの中に入って行った。

 

 

 

 

 

 

 

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