預託2

 

 

 

その日が近づくに連れて、
葉月は自分の気持ちがかなり明確になってきてるのを感じていた。

 

このお話が決まった時には

「蔵人さんの命令で別の人に抱かれるワタシ…萌え〜〜!」

的な気持ちがあるかな?って自分では思っていたんだけど、
そういう心境にはならなかった。

そう思えるのって、
その相手の人がまったく知らない人だったり自分が嫌いなタイプの人だったりする場合だろう。
東吾さんは知らない人じゃないし嫌いどころか「憧れの人」だから、
「蔵人さんに無理矢理行かされる」という設定にはそもそも無理がある。

だけど、浮かれまくってぴょんぴょん出掛けていくっていう心境にもなれなかった。
それは、葉月の中に別の不安があったからだ。

 

それは、

「東吾さんに楽しんでもらえるかな?」

っていう不安。

せっかくお誘い頂いたのだから、最低でも「つまらない女だった」と思われたくない。
できることなら楽しんでもらいたい。

でも葉月って、感じるツボが難しいっていうか、
男性からすると感じさせるのが難しい女だということは自分でもわかってる。
蔵人さんだってこの数年間、そのことで苦労をしてきたはずだ。

 

葉月を感じさせるのが難しい理由は、
葉月はエッチの時にいろいろなことを考えてしまうからだ。

蔵人さんとの時だって、自分のことよりも
「蔵人さんは楽しんでくれてるかな?」
「蔵人さんは気持ちよくなってるかな?」
なんてことが気になって、自分の快感に没頭できないことがよくある。

そういうことを考えてると自分が気持ちよくなれないっていうことはよくわかっているんだけど、
わかっていてもなかなか自分のことだけを考えていられない。

4年かかってやっと、
蔵人さんのことよりも自分のことを考えるっていうことが少しずつできるようになってきたけれど、
蔵人さん以外の人が相手だと自分がどうなるかわからない。

 

蔵人さんが葉月を東吾さんに預けた。
蔵人さんは東吾さんに「お愉しみ頂けましたら幸甚です」って言った。

っていうことは、東吾さんに楽しんでもらえば蔵人さんは嬉しい。
っていうことは、東吾さんに楽しんでもらえなければ蔵人さんはガッカリする。

そんなことを葉月は考えるようになる。

 

いけないいけない。
こういうことを考えるのが1番いけない!

わかってるんだけど、
東吾さんが一生懸命してくれてるのに冷凍マグロになっちゃってる自分の姿が頭に浮かぶ。

どうしよう?
こんな葉月じゃ自分も楽しくないし東吾さんにも楽しんでもらえない。


蔵人さんの声

東吾さんと会う前日の夜、
東吾さんが「ちょっと打ち合わせしたい」って言ってくださって、
電話でお話をさせてもらった。

東吾さんと電話でお話するのなんて初めてだ。
ちょっと緊張。

東吾さんは葉月をリラックスさせるために優しく話しかけてくれた。
葉月はすぐに打ち解ける。

葉月はお話をしながら、
明日は東吾さんに葉月で楽しんでもらえたらいいなぁって、心の底から思った。
だから、うまく楽しんでもらえるように、
今の葉月の状態を正直にお話ししてみようと思った。

 

「東吾さん。葉月ね、明日東吾さんにお目にかかるのはとても楽しみなんだけど、
不安に思ってることもあるんです。
それをお話してもいいですか?」

「何が不安なんですか?」

「あのね、葉月は今までやりたいことは全部自分の意思でやってきたんです。
啓太さんに遊んでもらうことも、札幌に行って一発さんに遊んでもらうことも、
自分がしたいって思ったから自分から行動できたんですよね」

「そうですね」

「今回のことも葉月は東吾さんのことが好きですから嫌々行くわけじゃないです。
楽しみなんだけど、自分から仕掛けた話じゃないし、
形としては『蔵人さんが預託した』っていうことになってるじゃないですか。」

「うん」

「そうするとね、いろいろ考えちゃうのが悪い癖の葉月としては、
東吾さんに楽しんでもらえなければ蔵人さんの顔に泥を塗ることになる、
みたいに考えちゃうんですよ」

「そんなこと(笑)」

「そんなことないっていうのはよくわかってるんですよ。
よくわかってるんだけど、
どうしても『しっかりしなくちゃ』とか『楽しんでもらわなくちゃ』とかって考えちゃうの。
そんなこと考えてると自分も楽しめないし、
結果的に東吾さんも楽しめないってことはわかっているのに」

「その通りですよ」

「だからね、明日はそういうつまらないことを葉月に考えさせないようにして欲しいんです…」

 

話しながら「情けないなぁ」って思った。

こんなお願いをしなければ楽しんでもらえない自分。
預けられたのに注文をつける自分。


蔵人さんの声

でも、正直にお話しすれば東吾さんならなんとかしてくれると思った。
カッコつけないで素の葉月を見せて、そのうえで自由にして欲しいと思った。

 

東吾さんと会う日の前日。
わくわくしてるしドキドキしてる。
この「わくドキ」は、蔵人さんからのプレゼントだ。

せっかくのプレゼントを、葉月は楽しみたい!

 

「今夜はよく寝てくださいね」って東吾さんからは言われていたのになかなか寝つけずに、
葉月は明け方まで寝返りを繰り返していた。

 

 

 

 

 

 

 

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