全頭マスクの夜2

 

 

 

マスクを外された時、「こっちの世界」に戻ってきたような気がした。

目の前にいるのはいつもの蔵人さん。
葉月は「あっちの世界」がどんなだったかということを、
蔵人さんに興奮しながら報告する。

蔵人さんは「そうでしょ?」って表情で、葉月の話を聞いている。

 

「最初被った時は普通に音は聞こえてたんですけど、自分がハァハァしてくるとね、
マスクの内側で自分の息の音でいっぱいになっちゃって、
外の音が聞こえなくなっちゃうんですよ!」

「そうですよ。
もっとマニアックなのになると、マスクの内側の耳の辺りにパッドが入ってたりして、
完全に音が聞こえないようになってたりするんです」

「へー!そうなんですか!」

 

蔵人さん、いろんなこと知ってるなぁ。
元々この分野は蔵人さんの得意分野だもんなぁ。

 

「でね。ここには葉月と蔵人さんしかいないっていうことはわかってるんだけど、
だんだん蔵人さんにされてるのかどうかもよくわからなくなってきちゃうんです」

「だから僕、一言も喋らなかったでしょ?」

「え?あ!そうか。そうだったんですか」

 

なるほどねー。
確かに蔵人さんがいろいろ話しかけてくれてたら、「他の人」とは思わなかっただろうな。
そういうこと、いろいろ考えてくれてるんだーって思った。

 

「葉月ね、全頭マスクしてみて、
葉月は今まで本当にいろんなことを『考えてた』んだなぁってことがよくわかりました。
蔵人さんの表情とかね、蔵人さんが次に何をしてくるのかな?とかね。
自分のどういう反応を求められているのかな、とかね。
あとアヘアヘ顔を見られちゃうのやだな、とかね。
そういうことを全部考えなくていい…ていうか考えるための情報がなくなって、凄く楽だったです。
自分じゃないみたいだったです!」

「そうですか(笑)」

「葉月ね、全頭マスク好きかもです」

「ふふふ」


蔵人さんの声

まだ興奮状態の葉月を、蔵人さんは食事に連れ出してくれた。

街はすでにクリスマスと年末のイルミネーションで飾られていて
どっちを向いてもディズニーランドの夜のパレードのような状態。
人も多い。

 

 

蔵人さんが「はい」って言いながら葉月の方に肘を突き出してくれる。
腕に掴まってもいいっていうことだ。

わーいわーい♪
蔵人さんがこういうことをさせてくれることって滅多にないので
葉月は大喜びで蔵人さんの腕にしがみつく。
なんだか今日は「特別」だなぁ♪

 

さっきまで…、ついさっきまで、葉月は暗闇の中で自分だけの世界にいたのに、
今はこうして眩しい光の中で、人混みに紛れて蔵人さんにくっついている。
そのギャップがとても不思議でとても楽しい。

 

有名な天ぷら屋さんで3000円もするかき揚げ丼をご馳走になった。
かき揚げ丼を頂きながらも、葉月のおしゃべりは止まらない。
だって、こんなにのんびりした気分で蔵人さんとゆっくりお話できるのって、
物凄く久しぶりなんだもん。

ただ楽しくおしゃべりしてただけじゃなく、葉月は真剣でもあった。
このところ葉月がいろいろ考えていたことをメールでは蔵人さんに伝えきれていなかったので、
そのことをどうしても蔵人さんにわかってもらいたいという気持ちもあったし、
蔵人さんからのコメントを聞きたいことも山ほどあった。

 

葉月が少し前から蔵人さんに訴えていたのは、

「肉便器になりたい」

ということだった。

肉便器というのはつまり、男の人の性欲を処理するモノでありたいということだ。

この気持ちは、かなり前から、もしかしたら蔵人さんと知り合う前からかもしれないけど、
ずっと葉月の中にある欲で、最近になって特に強くなってきた。

 

そう思う理由は、葉月の中で整理されているものとしては2つある。
(まだ完全に整理されてはいないんだけど。)

その理由の1つ。
葉月は、自分が男の人に「性の対象」として見られているかがとても気になるということ。
自分が男の人に勃起してもらえて、
さらに言うと射精してもらえる存在であるかということにこだわる。

少し前に「射精信者」という日記を書いた時にもそのことを書いたけど、
男の人が自分に対して射精をしてくれるかどうかということは、
葉月の中では女としての存在価値を左右するくらいに大きなことだ。

 

口では「若い時とは違うんだから射精なんてあってもなくてもいい」なんて、
わかったようなことを言っていても、それは大嘘。
本当はもらえれば嬉しいし、もらえなければ物凄く凹む。
射精をしてもらえないと、
女として役に立てなかった、相手を気持ちよくすることができなかったと、
泣きたい気分になる。

相手の人に気持ちよくなってもらいたいという気持ちは、自分が気持ちよくなりたいという欲よりも強い。
葉月はその欲が、普通の女性よりも強いみたいだということが、
だんだんわかってきた。

 

相手のことばかり考えていたから、自分が気持ちよくなることは後回しだった。
だからおまんこでイケなかったし、快感もいつも頭打ちだった。

蔵人さんはそんな葉月に、「まず自分(葉月)が気持ちよくなること」を教えてくれた。
おまんこでイケるようになったのも、お尻だけでイケるようになったのも、
頭の中が真っ白になっちゃって記憶がほとんどなくなるような気持ちいい状態になれるようになったのも、
全部蔵人さんが丁寧に仕込んでくれたからだ。

 

だけど葉月は自分が気持ちよくしてもらうだけじゃ充たされない。
蔵人さんが「葉月を気持ちよくするため」にいろいろ頑張ってくれているのを見ると、
「してもらっている」という気分になる。

蔵人さんは射精しないこともあるし、
大抵は最後の最後に「ご褒美として出してくれる」ことが多い。
それは、とてもとても恵まれている環境だということはよーくよーくわかっているけれど、
でも心のどこかで「何かが違う」っていう声がいつも聞こえてた。

 

蔵人さんが楽しんでないとは思ってない。
葉月に好意を持ってくれてることもわかるし、大事にされてるとも思ってる。

だけど、
いつもいつも「してもらってる」もしくは「育てられてる」というような気持ちになるだけで、
「性欲の対象」になっている気がしない。

 

頭で考えれば、「何を贅沢なことを言ってるんだ」って自分で思う。
自分本位のエッチしかしてくれないで、勝手に射精して勝手に満足しちゃう男の人もたくさんいて、
そういう人の相手をしている女性はみんな、
充たされない気持ちを抱えているっていうことも良く知っている。
そういう女性に比べれば、自分が物凄くいい環境にいるんだっていうことは自覚している。

 

でも、理屈じゃないんだ。
「よくしてもらってる」とか「感謝する」とか、そういう頭で考えること以前に、
女としての本能が、何かを欲してる。

女として求められたい。必要とされたい。
男の本能をぶつけられたい。おまんこで役に立ちたい。

そういう「欲」は、本能としか言いようがない。


蔵人さんの声

葉月は蔵人さんのことを以前よりもどんどん好きになっていっている。
好きになればなるほど、蔵人さんのことが気になる。
蔵人さんに楽しんでもらいたいと思うし、蔵人さんに満足してもらいたいと思う。

そんなことばかり考えるようになるから、自分の快感に没頭できなくなる。
自分がどうすれば蔵人さんは喜んでくれるのか、自分にどういう反応を求められているのか、
そんなことばかり考えているから結局没頭できない。
気持ちよくはなれるけど、
いつも最後には「また葉月がしてもらうだけだった」というダメダメ感が残る。

 

蔵人さんを好きになればなるほど、余計なことを考えてしまう。
蔵人さんを好きになればなるほど、メスとして役に立っていない自分に落ち込む。

そういう「余計なことを考えてしまう」という悪い癖を
何かで断ち切ってみたかった。
そんなことを考える余裕もないような、考える必要がないモノになってみたかった。

モノなら、余計なことを考えないでいい。
「してもらう」なんて考えることもなく、
「使われる」ことで役に立つことができる。
「好き」だなんて感情に左右されない。

だから、「肉便器」だった。
相手のことなんて考えなくていい、ただ使われるだけの肉便器になりたかった。
これが2つ目の理由。

 

こういうことを整理されないままいろいろ考えていて、
こんなことをいろいろ考えてしまう状態が「正しい」はずがなくて、
その現状を蔵人さんに聞いてもらっていた。

まだ結論の出ていない今の葉月の現状。
いろいろ話していく中で、葉月が興味を持ったアイテムが、全頭マスクだったんだ。

 

蔵人さんへの気持ちを、マスクで遮断してみたかった。

 

電話やメールで散々話したそういう気持ちを、かき揚げ丼を食べながら葉月は熱く語る。
蔵人さんは静かに聞いてくれていた。

 

 

 

 

 

 

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