抜き打ち

 

 

その日、葉月はいつもの通りに普通に仕事をしていた。

夕方、ちょっと書類の届け物があったので車で会社を出て、
用事が済んだらそのまま直帰しちゃおうと思っていた。
届け先の近くのコインパーキングに車を止めて、車を出たところで携帯が鳴った。
着信を見ると珍しいことに蔵人さんからだ。

 

「はい、葉月です」

「蔵人です」

「わーい、蔵人さん。どうしたんですか?こんな時間に」

蔵人さんが明るい時間に電話をくれることなんて滅多にない。

 

「僕ね、今○○駅ってところにいるんです」

「え?それってすぐ近くじゃないですか。葉月は今、○○にいるんです。電車で駅3つくらいですよ!」

「仕事の打ち合わせに来たんですけど、先方の都合で急に切り上げられちゃったんですよ」

「えっ?それじゃもしかしてお目にかかれるんですかっ?」

「葉月さんがよければ」

「よければって…いいいいいに決まってるじゃないですかぁ♪

 

 

10分後に、葉月がいる駅の改札で蔵人さんに会えた。
突然の電話がかかってきてからまだ15分しか経ってない。

「わーいわーいわーい。蔵人さん、蔵人さん、蔵人さん♪」

「こんにちは」

なんだか信じられなくて、嬉しくて嬉しくて葉月はぴょんぴょんしてしまう。

 

「お仕事、全部片づかなくて残念でしたね」

「まぁ、仕方ないですよ」

「で、すぐに会社に戻られるんですよね?」

「いや、今日は打ち合わせが長引くと思っていたんで、
他の予定は入れてないので少しゆっくりできます」

「ホント〜ですかっ?(嬉♪)」

「8時くらいまではいられます」

「8時って…、あと3時間もあるじゃないですかぁ!わははは

 

たなぼただ。
こんなに嬉しいたなぼたがあっていいのだろうか。

「それじゃどうしましょう。蔵人さん、お腹空いてます?」

「いえ、特に」

「それじゃお茶?あ、葉月ね、車で来てるのでお酒は飲めないんですよ」

「僕はなんでも構いませんよ。…保護者ルームでも」

「ほ、ほほほ保護者ルームぅ???」

 

そっか、3時間もあるんだからエッチも可能…。
だけど…ええええっ?
こんな展開になるなんて夢にも思ってなかったので心の準備ができてない!

 

「ででででも、今日は突然だったので何も持ってないですよ?完全丸腰ですよ?」

「僕は構いませんよ。(余裕)」

「あ、でも葉月、まだ生理がちょっと残ってて…」

「だから?」

「だから、え〜っと、あっそうか。そんなことは何も問題にならないんでしたよね」

「ふふ、はい」

「そそそそれじゃ、それじゃ、ほほほほ保護者ルーム、ですかね?」

「僕は葉月さんの好きなところでいいですよ。(余裕笑)」

 

ってもー、蔵人さん、すごいイジワル。
葉月に決めさせてる。葉月に決めさせてる。
「行きましょう」って自分からは言わないで、
葉月が蔵人さんをホテルに連れ込むのを待ってるんだ〜〜!(ずるい!)
こういう状況で「それじゃお茶にしましょう」なんて葉月が言えないことも蔵人さんはわかってるくせに。


蔵人さんの声

「それじゃ、少し離れたところに車止めてますからこちらにどうぞ。(とほほ)」

「はい(笑)」

 

「ねぇ、蔵人さん」

「はい」

「ここってね、メチャメチャ葉月の地元なんで、知り合いが山ほどいます」

「一緒に外を歩きたくないってことですか?」

「違いますよ!せっかく来てくれたんだから、蔵人さんをみんなに見せびらかしたい気分なんです。
街中を二人で練り歩きたいです♪」

「そうですか…(苦笑)」

 

駐車場まで少し歩きながら、葉月は本当にドキドキしていた。
さっき電話がかかってきてからまだ2〜30分しか経ってない。
今日は仕事もそんなに忙しくないし、
たまには早く帰って家でゆっくりするか、なんて考えてたのに、
この急展開。

お尻の毛も剃ってないし、生理だから生理用の色気ないパンツはいてるし、
ウォシュレット浣腸もしてない。
デートの準備を何もしてない「いつもの」葉月。
でもそのことは、何故かあんまり気にならなかった。

そういう現実的なことを気にするというよりも、この夢みたいな展開がまだ信じられなくて、
頭の中がふわふわしてたっていうのがこの時の葉月だった。

 

蔵人さんに葉月の車に乗ってもらうのも初めてだった。

 

 

 

 

 

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