お姫さまデート

 

 

「水曜日は○○で研修なんですよ。14時には終わる予定です」

「その日は今のところ予定が入っていないので、空けておきます」

「ええっ?ホント〜〜??」

こんなメールのやりとりで、この日のデートは決まってしまった。

 

葉月はいつも、自分のスケジュールを蔵人さんにメールで送っている。
言われているわけでも、そうしようと自分でハッキリ決めたわけでもないんだけど、
伝えておけば蔵人さんの行動と接点があるかも知れないし、
逆に絶対に出られない日を伝えておけば
誘ってもらって蔵人さんをガッカリさせることがないと思っているから。

だからこの日も何かを期待して伝えたのではなく、
通常の業務連絡の中の一項目って感じだった。
言ってみるものだなぁ。

 

「どこへでも伺いますよ」

「え〜っ?本当ですか〜?それじゃ、研修のホテルのロビーにお迎えがいい!」

 

「待ち合わせ」じゃなくて葉月がいるところに「お迎え」ってところがお姫さま気分になれる。
葉月は今まで「呼ばれて出掛けて行く」っていうことがほとんどだったので、
(もちろんそういうことを不満に思ったことはないけれど)
「お迎え」っていうのにすごく憧れていたのよね。

研修が終われば同僚のみんなはきっと、会社に戻るか、
「みんなでお茶でも飲んでくか?」って話になるだろう。
そこで葉月は「ごめん、ちょっと約束あるんだ〜♪」と言ってそそくさとロビーに向かって蔵人さんとデート。
腕組んでロビーから出て行く葉月と蔵人さんの姿を後ろから見られちゃったりするのもいいかも〜〜、
なんてね。ふっふっふ♪

 

いつもの大きなお道具バッグを足元に置いて参加する研修…
話はちゃんと聞いていたけどそわそわしちゃって落ち着かない。
予定時間よりも長引きそうだったので、早めに抜け出して葉月はロビーに降りて行った。

蔵人さんはロビーで待っていてくれて、葉月の姿を見ると立ち上がって笑ってくれた。

わーい、本当にお迎えに来てくれた〜♪

お姫さまだー、お姫さまみたいだぁーーー♪

 

そんな有頂天の葉月と蔵人さんは近くの公園に「お花見デート」に向かった。
桜がちょうど見頃で、こんないい時期に一緒にお花見できるってことに葉月はるんるん気分になっていた。

桜が綺麗な時って、ほんの数日間しかない。
ただ会えるだけ、遊んでもらえるだけでも嬉しいのに、
それに今月はもう月初に一度遊んでもらっているから、またしばらく会えないと思っていたのに、
こんな桜のシーズンにまた会えるなんて!
一緒に桜を見られるなんて、本当に幸せだなぁって思った。
葉月のそんな気持ちは公園を歩く足取りに表れていただろう。(←ほとんどスキップ状態)

公園を、ただ並んで歩いただけ。
時々写真を撮ったり、いろんなお話をしたりして、のどかな時間は過ぎていった。
葉月にとってはとっても贅沢で、とってもスペシャルな時間だったんだ。

 

「蔵人さん、サイトはご覧になりましたか?葉月、生理になっちゃったんですよ」

「見ましたよ。知ってます」

「でもね、以前だったら生理になっちゃったら当然デートは延期だし、
落ち込んだり凹んだり相手の人に申し訳なかったりしてたんですけど、
今回は生理になってもそういう落ち込みは全然なかったんです」

「その方がいいでしょ?」

「いいです。楽です。それに生理でもちゃんと気持ちよくなれるってわかったし」

「よかったじゃないですか」

 

「高校の時にね、体育の先生が女の先生で、すごく厳しかったんです。」

「そうなんですか」

「そう。それでね、生理くらいじゃ体育を見学にさせてもらえなかったんですよ。
病気じゃないからって。水泳の時間もですよ!」

「ふ〜ん」

「今の気分はね、ちょっとそんな感じです。
生理でもデートできるんだ〜っていうよりも、『生理でも許してもらえない』って感じ」

「嫌ならやめてもいいんですよ?」

「ちちち違いますってば!そういう意味じゃないんですけどね。
生理でも許してもらえなくて容赦なくヒドイことされる葉月ちゃんっていうシチュエーション、
いいかなって思ってね、えへへ」

なんだか言ってることがシドロモドロで、浮かれてるのが自分でもわかる。

 

生理不順はずっと葉月のコンプレックスのひとつだったし、
不順な生理でエッチ的にはずいぶん損をしてきたなって思う。
蔵人さんは葉月が生理でもガッカリする様子はまったくない。
生理でも楽しめるし、葉月を楽しませる方法を知ってる。
その余裕というか、懐の広さみたいなものに葉月はとても安心できるんだ。

 

そうそう、いろんなお話をしている中で、蔵人さんが学生時代に「写真部」に所属していたことが判明。
なるほど〜〜って思った。
蔵人さんが撮ってくれる写真って、裏葉月に載せる時に一度もトリミングをしたことがない。
構図の決め方がうまいなぁって葉月はずっと思っていたから。
それに、蔵人さんって、あんまりえげつない写真を撮らないのよね。
いつも綺麗に撮ってくれる。

 

そんな蔵人さんが撮ってくれたのがこの画像。
「菜の花姫・葉月のハタチ画像」と葉月が勝手に命名。
(「さすがにハタチは…」と蔵人さんは言ってたけど。笑)

 

 

公園を一周りして楽しかったお花見デートは終わり。
歩きながら蔵人さんが「どこへ行きましょうか」って葉月に聞いてきた。

「どこって…えーっと…」
いつものことだけど、また急にドキドキしてきた。

「いつもの新宿でも渋谷でもいいし、狸穴(まみあな)でもいいですよ」

「ま、狸穴…!」

さらにドキドキした。
狸穴と言えばアルファ・インのことだ。
あのおどろおどろしい雰囲気が頭に浮かんだ。

行ってみたいけど…でもあんなところに行ったら何をされるかわからないし…
それに生理だし…でも行ってみたいし…。
どうしようどうしよう、なんて答えよう…。

 

「葉月は蔵人さんに連れて行ってもらえるならどこでも…」
下を向きながらやっとそう答えた。

蔵人さんはそんな葉月には何も言わないで、タクシーを止めた。
そして運転手さんに
「狸穴坂へ」
と行き先を告げた。

「狸穴っていうと、ロシア大使館のところでいいんですか?」
「そう」

蔵人さんと運転手さんが一言二言やりとりをしている間、葉月はタクシーの座席で

「お姫さま、狸穴に連れ去られる!」

などというキャッチフレーズを頭に思い浮かべていたりした。(相変わらずバカ)

 

葉月ピーンチ!
この後のお姫さまの運命は…次回を待て。(笑)

 

 

 

 

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