恋の自覚

 

 

蔵人さんと待ち合わせした喫茶店で、
2時間くらいおしゃべりをしている時の葉月はまだ普通だった。

それからパスタ屋さんに行ってランチのパスタを食べ終わるくらいから、
葉月はだんだん胸が苦しくなってきた。

 

前の「保護者ルーム」のレポートで、
最後の締めくくりに「何も考えないで遊んでもらえばいっか」みたいなことを書いたけど、
実際はそうはいかずに葉月は考えまくりだった。

前回のデートから、葉月は蔵人さんのことばかり考えていた。
蔵人さんのことと、それからあの不思議な感覚...嫌なはずのことが嫌じゃなくなっちゃう、変な感覚。
あの感覚を意識すると、目の前にいて優しく語りかける蔵人さんが急に違う人に見えてくる。

 

怖いわけじゃない。
嫌なんでもない。

「この人は葉月を、『葉月じゃない葉月』に変える人だ」
そんなような、不安と期待が入り混じったような変な気持ちになる。

 

ホテルに向かう道を歩いている時に、葉月のその「気持ち」はピークになった。
葉月はいつもは緊張すると逆におしゃべりになるんだけど、
この時はその緊張を超えて何も話せなくなっていた。

無言に耐えられなくて「何かしゃべらなくちゃ」って思うんだけど、言葉が出てこない。

あ〜、ダメだ!
胸が苦しい...!

 

「く、く、蔵人さん...」
「どうしたんですか?」

蔵人さんは葉月のこの超ぶっ飛び緊張をわかってるのかわかってないのか、
こっちをちゃんと見ないで普通に答えてくる。

 

「何かしゃべってくださいよぉ〜」
「どうして?」
「なんか、緊張しちゃって胸が苦しくなってきました」
「ははは。それじゃそういう時は黙っていた方がいいですね」
「うひぃ〜〜、そんなこと言わないで何かお話してくださいよぉ」


蔵人さんの声

初めての人とならともかく、蔵人さんとはもう4回目のデートになるのに、
会う度に、会うごとに、緊張度が高まっていくような気がする。

プレイに対する「ワクワクドキドキ」感もある。
自分の肉体の変化、反応の変化に対する畏怖の気持ちもあると思う。

でもそれだけじゃない。
葉月には本当はわかっていたんだ。
この胸の苦しさの理由を。

 

この息苦しさは「恋」の感覚だ。
葉月は蔵人さんを好きになってる。
惚れっぽい葉月が言ってもあまり重みはないんだけどね。
でもこの胸の苦しさは、「かなり本気で好き」じゃなければありえない。

 

葉月がそのことを完全に自覚したのはこの日の一週間くらい前だった。
蔵人さんと電話で話をしていて何かの話の時に

「葉月さんは髪はストレートの方が似合うんじゃないかな」

っていうようなことをちょっと言われた。

「そうですかねぇ」なんてその時はサラッと流したんだけど、
その翌々日に葉月は美容院に行っていた。(笑)


蔵人さんの声

男に言われて髪型を変えるなんてこと、今までしたことがない。
髪にしても服にしても、意見は聞いても決めるのは自分、いつもそんな感じだった。
それが、「変えろ」って言われたわけでもなく、
会話の中でのほんの一言に反応してすぐに美容院の予約をする自分..。
これは超純情青春型の初恋的恋愛モードだ。

 

あーあ。

一方ではヤリマンだのバイキングだのって言われてる葉月なのに、この可愛らしさは何なのよ?
そんな自分になんだか納得できない気分で、葉月は美容院の鏡の中の自分を見ていたのだった。

 

遊んでもらってるだけだ。
蔵人さんは「保護者」なんだから、好きになったらダメな人なんだ。
葉月の気持ちが重くなったら、もう遊んでもらえなくなる。

この一ヶ月、ずっとそんなことを考えていたような気がする。

 

 

ほんの1mくらいしか離れてない、斜め前にある蔵人さんの背中をチラチラ見ながら、
葉月は胸の苦しさに耐えてちょこちょこ歩いてついていくしかなかった。

ラブホ街はもうすぐ目の前だった。

 

 

 

 

 

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